保釈請求は弁護士によって差が生じるか?

 逮捕・勾留されてそのまま起訴されますと、そのまま勾留が継続します。つまり、起訴されたからといって当然に釈放とはならないわけです。

 その場合に問題になるのが保釈請求です。

 保釈についての詳しい説明はウィキペディアに譲りますが、要するに裁判官の判断によって保釈金を裁判所に納めて拘束されていた身柄を解放する手続です。

 ここで大事なところは、保釈するかどうかを決めるのは裁判官だということです。誤解している人が多いのですが、検察官ではなくて裁判官が決めます。警察官は保釈手続には関与しません。

 ただし、裁判官が保釈するかどうかを決める際には、検察官に対して保釈してもいいかどうかについて意見を聞きます。それに対して検察官は、保釈してもいいとか裁判官にお任せするとか保釈は不適当だとか絶対認められないという意味の回答をします。検察官が保釈してもいいと言う場合はほとんどなく、良くても裁判官にお任せすると言うのがせいぜいで、基本的には検察官は保釈に反対します。しかし、検察官の本音として、立場上保釈に反対するけど裁判官が保釈を認めるのならばそれでもかまわない、という意見から絶対に保釈は認めらないから強硬に反対する、という意見まであり、その本音は検察官の反対意見ににじみ出ます。

 裁判官は、検察官の意見に拘束されるわけではありませんので、検察官が反対したら必ず認められないというわけではありませんが、裁判所としても検察官の意見を尊重する傾向がありますので、検察官の意見を無視するわけにはいきません。

 では、どんな場合に保釈が認められてどんな場合には認められないかが問題になりますが、どんな弁護士がやっても認められない事件もあれば、普通の弁護士なら大抵認められるという事件もあります。

 しかし、どんな場合にもグレーゾーンというものがあるものでして、やりようによっては保釈の許可を得ることができるが、ツボを押さえないと認められないという微妙な事件があります。そういう事件では弁護士によって差が生じる場合があります。

 具体例を一つあげます。守秘義務がありますのでかなりデフォルメとある程度抽象的な説明になっております。

 ある犯罪の常習犯として起訴された被告人のご家族から弁護の依頼がありました。聞くと私選弁護人が既についていましたが、何度保釈請求をしても認められないのでなんとかならないか、ということでした。

 そこでまず拘置所に行って被告人から話を聞いたところ、同じ犯罪の前科が複数あって常習犯であることは否定できず、被害者との示談もできておらず、今回の裁判も実刑確実という事件でしたので、一般的には保釈は難しい部類の事件でした。

 しかし、被告人としては、逮捕されたときに手がけていた仕事が中断してしまっており、このまま服役すると何人もの人に迷惑をかけるので仕事の一区切りをつけるために保釈してもらいたい、という強い希望を持っておりました。そして弁護人に何度も保釈請求をしてもらったが全て却下(認めらなかった)されたということでした。

 事件の内容を聞くと証拠隠滅のおそれはないと思われましたので保釈の可能性はあると考えて、被告人には「あまり期待しないでくださいね。」と言って依頼を受けました。

 裁判所に行ってそれまでの保釈請求の書面を確認しましたところ、被告人が説明した事情は一応書いてあるのですが、どれも抽象的な記述にとどまり、被告人がどんな仕事をしていて誰にどのような迷惑がかかるのかよくわからない内容の保釈請求が繰り返されていました。

 そこで私は、被告人の仕事仲間と連絡を取り、その仕事仲間さんから被告人の話の裏付けを取るとともに迷惑を被る人たちを特定する内容の陳述書を書いてもらい、それを添付して保釈請求をしたところ、保釈が認められました。そのとき裁判官が「保釈が必要な事情が具体的にわかりましたので認めます。」と言っていましたので、被告人が言っていた内容がどれだけ具体的に裁判官に伝わったのかが判断の分かれ目になっていたと思われます。